2025.1.15(水)「中外時評_遠隔医療の普及を阻む壁」日経新聞 朝刊

  •  人口減と高齢化が加速する日本にとって、遠隔診療は住民の医療アクセスを確保する「頼みの綱」。ところが、その活用をはばむ制度上の障壁がなかなかとれない。
  • 長崎県五島市では、路線バスの縮小やタクシー会社の撤退で通院に困る高齢者が増加。市は遠隔診療の設備を備えた車両が島内を巡る「モバイルクリニック」の運用を2023年から始めた。
  • 問題は点滴、注射、尿検査といった処置や検査を車内で実施できない点だ。
  • 看護師が医師の指示のもとで行う補助行為について、国のルールに「診療報酬を請求できるとの規定がないので見送らざるを得ない。」(五島市)という。
  • また車両が法令上、医療を提供できる場と位置づけられていないことも制約になる。患者宅の敷地に停車できれば医療の提供が認められた「居宅」と解釈できるが、近隣に停車せざるを得ない場合には困る。
  • 巡回診療として運用するなら事前に県に実施計画を出す必要があり、診療日数にも大きな制限がかかる。
  • 厚生労働省は25年の通常国会で、通知や指針で認めてきたオンライン診療を医療法に規定し直す法改正を目指している。
  • 診療所と自宅、職場以外でオンライン診療を受けられる施設を定義するが、そこでは看護師による補助行為を実施できる場として車両や公民館、駅ナカブースなどを幅広く認めるべきだろう。

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