2025.5.1(木)「小児科消失という愚かな人災―子育て不安を黙殺する厚労省」選択_2025年4月号

  • 子どもが風邪を引いたときなど、気軽に診察してもらえる小児科クリニックが全国で減っている。
  • 背景には、小児科に厳しい診療報酬の仕組みがある。
  • 厚生労働省の「令和5年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によれば、全国の小児科クリニックは1万7778施設で、1984年の2万9164施設から39%減少した。この間にクリニックの総数は34%増えているから、小児科の減少は際立っている。
  • 小児科クリニックが減り続けるのは少子化が進み、患者数が減っていることも影響しているが、「小児科の診療報酬が安く、経営を維持できないから」(都内クリニック経営者)だという。
  • クラウド型電子カルテを販売するCLIUS社が厚労省のデータを基に分析した調査によると、2020年度の小児科の患者1人あたりの平均診療報酬は974点(1点10円)で、内科1590点、外科1347点を下回る。
  • 1人の患者を診て内科なら6160円、外科なら3730円も収入が違う。小児科は儲からない。
  • これは診療報酬を統制する厚労省が小児科医療を軽視してきたためだ。
  • その象徴が、1996年の診療報酬改定で導入された包括支払い制度だ。
  • この制度では医療行為の中身に関係なく1回の外来受診に対して一定額が支払われる。
  • 現在、6歳未満を対象として、初診で処方箋が交付される場合は604点、再診の場合は410点だ。
  • 医療機関は出来高払いも選択できるが、多くの場合、包括支払を選んだ方が収入は多い。元の報酬が安すぎるのだ。
  • 包括払いにするなら、内科や外科の出来高と遜色ないレベルに設定すべきであったが、厚労省は、その半分以下の支払いしか認めなかった。このことを説明できる合理的な理由はない。
  • 小児科は収入が少ないのに、手間がかかりコストは高い。院内設備から医療機器まで、成人用より高価な子ども仕様のものが必要だし、内科より多くの看護師を雇わねばならない。
  • 診療報酬が低く、コストが高いのだから、小児科クリニックの経営は厳しい。
  • 小児科医療を充実させるなら、厚労省は報酬を大幅に引き上げるべきだ。

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